俳句と川柳の違い
俳句と川柳は、どちらも五・七・五の十七音で作る短い詩です。
大きな違いは決まりにあります。
俳句には季語を入れるのが原則で、切れ字(句の中に区切りを作る言葉)もよく使いますが、川柳にはどちらの決まりもありません。
詠むものも違います。
俳句が詠むのは、季節の移り変わりと、その中の自然や暮らしです。
川柳が目を向けるのは人のふるまいや世の中のできごとで、そこにあるおかしみ(くすっと笑えるところ)を、ふだんの話し言葉で詠みます。
違いを表で見る
| 俳句 | 川柳 | |
|---|---|---|
| 音の数 | 五・七・五の十七音 | 五・七・五の十七音 |
| 季語 | 入れるのが原則 | 決まりはない |
| 切れ字 | 使うことが多い | 決まりはない |
| 言葉 | 昔の書き言葉(文語)が多い | ふだんの話し言葉(口語)が中心 |
| 詠むもの | 季節の移り変わりと、その中の自然や暮らし | 人のふるまいや気持ち、世の中のありさま |
| もと | 俳諧の連歌の最初の句(発句) | 前句付の付句 |
| 名前 | 明治に正岡子規が使って広まった | 句を選んだ柄井川柳の名から |
俳句のもとになった発句では、季語と切れ字の両方を入れることが求められていました。
句で比べる
俳句
江戸時代の俳人、小林一茶の句です。
一茶のころは、今の俳句にあたるものを「発句」と呼んでいました。
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
一茶『八番日記』
あの月をとつてくれろと泣子哉
一茶『七番日記』
一つ目の「雀の子」は春の季語、二つ目の「月」は秋の季語です。
季語が入っていることで、読む人はどの季節の句なのかをすぐにつかめます。
月の句は、初めを「名月を」と書いた本もあります(名月も秋の季語です)。
二つ目の「とつてくれろ」は話し言葉です(「とつて」の「つ」は、今の小さい「っ」にあたります)。
俳句は書き言葉で作ることが多いのですが、一茶は話し言葉もよく使いました。
川柳
川柳という形が生まれるきっかけになった句集『誹風柳多留』の初編(1765年)から2句です。
句集には、作った人の名前は載っていません。
本降に成つて出て行く雨やどり
『誹風柳多留』初編
寝て居ても団扇のうごくおや心
『誹風柳多留』初編
一つ目は、雨宿りをしていた人の句です。
雨がやむのを待っていたのに、かえって本降りになり、その中を出て行きます。
待ったかいがなかった、というところにおかしみがあります。
二つ目は、寝ていても団扇が動いている、という親の姿を詠んだ句です。
終わりの「おや心」(子を思う親の気持ち)が、この句の言いたいことです。
二つの句とも、季節ではなく、人のふるまいに目を向けています。
季語の入った川柳、季語のない俳句
上の二つ目の句の「団扇」は、俳句では夏の季語です。
川柳には季語の決まりがないので、季節の言葉が入っていてもかまいません。
反対に、季語を入れずに作る俳句もあり、無季俳句と呼ばれます。
どちらも俳諧から生まれた
俳句と川柳は、どちらも俳諧から生まれました。
俳諧のもとは連歌で、五・七・五の句と七・七の句を何人かで付け合い、長くつないでいく詩です。
「俳諧」という語のもともとの意味は「おどけ」「おかしみ」で、川柳が詠むおかしみと同じです。
また俳諧では、和歌や連歌が避けてきたふだんの言葉やことわざも、句に使いました。
俳句の生まれ
俳諧でいちばん初めに詠む五・七・五の句を、発句といいます。
発句は、一句だけでもまとまった作品になるように作られました。
江戸時代には、連歌を続けずに、発句だけを作ることも多くなりました。
「俳句」は「俳諧の句」を縮めた言葉です。
明治時代に正岡子規が、ひとつの作品としての発句を指してこの言葉を使い、そこから広まりました。
川柳の生まれ
川柳のもとは前句付です。
七・七の題(前句)が出され、それに付ける五・七・五(付句)を作って、出来ばえを競いました。
江戸の柄井川柳は、1757年からこの前句付の句を選ぶ役(点者)を務め、句の選び方のうまさで人気を集めました。
1765年に初編が出た『誹風柳多留』は、柄井川柳が選んだ句の中から、題を省いて付句だけを並べた句集でした。
この句集は評判になって167編まで続き、のちの川柳のお手本になりました。
今の川柳も、題を付けずに五・七・五だけで作ります。
「川柳」という名前は、柄井川柳の名からきています。
今のように「川柳」と呼ぶのが一般的になったのは、明治から大正にかけてです。
短歌・狂歌との違い
短歌は和歌の形のひとつで、五・七・五・七・七の三十一音でできた歌です。
俳句・川柳より、後ろに七・七の十四音が続く分だけ長くなります。
狂歌は、川柳と同じくおかしみをねらった歌ですが、形は短歌と同じ五・七・五・七・七です。
よく知られた古い歌の言葉を少しずつ変えて、まったく違う意味にしてしまう作り方が多く見られます。
川柳も狂歌も、江戸時代に盛んに作られました。